明日に向かって撃て!

Washington出張の時に、犯罪博物館みたいな所でイベントをやったんだが、その時に彼らにまつわる物はないのかしら、と思い探したけど、どうやら何もなかった。(Bonnie and Clydeの蜂の巣になった車はあったが、実物かどうかは疑わしい)


それで、Wさんを探して尋ねてみた
「Wさぁん。Wさんが知ってるかどうか判んないんですけど、昔の映画です。アメリカの映画なんですけど、アメリカでのタイトルは判んないんですけど日本では『明日に向かって撃て!』っていう映画があって。。。」
「ああ、それは"Butch Cassidy & The Sundance Kid"」
「ああ、そうそう。やっぱWさんは知ってたか」
「それがどうかしましたか?」
「あれにまつわる展示品がないかと思ったんですけど」
「ああ、あれはもうほとんど西部劇の時代の話だからね。きっと大昔過ぎて、ここにはないよ。最後はボリビアでしょ」
「そうかあ」
「なんであの映画知ってるんですか?あの映画好きですか?」
「いやあ、あの映画、見た人はみんな好きでしょ」
「あれはまさに私の青春時代の映画だね」


ということで、1970年公開だった。
俺は当然TVでしか観たことがなかったんだけども、子供心に(とはいっても中学生とか高校生の頃だ)、まるであしたのジョーみたいな凄い終わりだな、と思った記憶がある。
恐らくは60年代末期に世界的に起きた若者達の反乱の最中に撮影されて、ピークは過ぎたか鎮圧された頃に公開されていたのであろう時代背景を考えると、若者の冷酷さ、飽きっぽさ、浅はかさ、みたいな部分がクローズアップされているのがよく判る。勿論、それは大きな共感を持てるクローズアップで、だからこそ1985年の高校生が見ても、2010年におっさんが見ても、名作と言えるのだけど。
だって、あんなに愚かな2人だけど、何度も観て結末を知っていている人たちは最後のシーンで、「行くな、行くな」と思ってしまうのだ。きっと。


先週の"Sting"と比べてもPaul Newmanが異常にカッコイイ。対するRedfordは、"Sting"の方がチャーミングだ。ヒゲ面が悪いんだと思った。丁度、「アクターズ・スタジオ・インタビュー」を読んでいるので、2人の逸話の部分を思い出した。ある意味、アメリカ映画主演最強コンビと言える1組なんだろうな。


だけど、午前十時の映画祭、これ興行順を逆にするべきだったね。先にこっちやって、翌週に"Sting"やれば2人は元気なまま、ハッピーエンドで終わったのにさ。


それにしてもこの「明日に向かって撃て!」という邦題は、明らかに"Bonny & Clyde"の「俺達に明日はない」(調べてみると1967年公開)を意識して付けられたものだが、"Bonny & Clyde"は確かに「俺達に明日はない」という映画であったが、"Butch Cassidy & The Sundance Kid"は、どうみても「明日に向かって撃つ」という内容ではなく(というか、「明日に向かって撃つ」という行為がそもそも成立しないんだが)、明らかに配給会社の都合で決められた邦題にも関わらず、何となく気分的にそうかなというのが半分、騙されたような気持ちが半分。



蛇足ながら、出張での市内移動中にWさんが隣に座った時の会話。
「私が初めてWashingtonに来たのは5歳とか6歳の時の家族旅行でした」
「へえ」
「2回目は大学生の時に」
「ほう」
「戦争の抗議運動で来たんです」
「えええぇぇ。戦争って。。。ベトナム戦争ですよね?」
「当たり前でしょ。どの戦争だと思ったんですか?第二次世界大戦?私はそんなにトシじゃないよ!」
「いやいや、ベトナム戦争だと思いましたよ。ちゅうことは本当にあのForrest Gumpのシーンみたいな所にいたんですか?」
「そうです。私は戦争には行かなかったけど、あの映画はほとんど私(の世代)の人生とオーバーラップしてるね。非常に懐かしかった」
普通の日本人にとっては画面の中の出来事を、リアルに体験したアメリカ人を目の当たりにするというのは、何となく歴史上の人物を見るような気さえしてしまう。