3-1。
俺のサッカー観戦歴に燦然と輝く一戦となった。
完勝・圧勝・粉砕。
衝撃的と言える試合。
Barcaは、この春に何度か見たBarcaと、何も変わらないBarcaだった。普段どおりのBarca。Champions Leagueの決勝だというのに、何ら特別な事がなかった。戦前にPepが言ったように
「飽きるほど自分たちのサッカーをやる」
というそのままの試合だった。そして、完璧な試合だった。溜め息が出る様な、美しいサッカーだった。
Xaviを中心に、狭いスペースを前後左右自在に回るパス。
Iniestaの異常なキープ力。
Messiのドリブル。
この稀代の天才3人が同じチームで、かつ完全に噛み合ったコンビネーションで動くというのはある種の奇跡とさえ思えるんだけども、その奇跡を同時代人として、普通に目撃できる我々は幸せなのだろう。
Unitedは、何も出来なかった。1/4FinalでChelseaを、Semi-FinalでSchalkeを完全に叩きのめしたUnitedが。
Rooneyが唯一の、本当に一回限りのチャンスを生かして1点は取った(あれは実は難しいシュート。並のFWなら上に噴かして終わり。絶対にVVの手が届かない所にイッパツで蹴ったRooneyも凄い)が、それだけだった。
あのRooneyのゴールは、Barcaにとっては嫌な時間帯、逆にUnitedは先制された後すぐに追いついて「やっぱりダメか」から「これはイケる！」へと奮い立ったとも思うが、そこまで。
俺が一番警戒していたChichalitoは、そもそもボールが出なかったこともあるが、完全に消えていた。
Barcaのパス回しは、Englandでは強い強いUnitedを完璧に赤子扱い。
無敵のトライアングル。
誰かが言ったようにプレイステーションのゲームのようなワンタッチ。
3人目のスペースへの飛び出し。
精密機械のような連動は、鳥肌が立つほど美しい。
Unitedの守備は完全に後手後手。面白いようにサイドを破る。
1-1で前半終わって、スクリーンにstatsが表示されたが、Possessionはなんと、驚愕の67%。
相手はOsasunaとか、Shakhterではなくて、天下のManchester Unitedだ。恐らくは60%、最低でも55%は取ると予想していたが、世界で2番目に強いManchester Unitedを相手に、67%という数字は衝撃的。Unitedは決してMadridみたいにPossessionを放棄してドン引きした訳ではない。要するに、Barcaはどことやっても変わらないPossessionを叩き出すということだ。
隣にいたUnitedファンは、何度となく悲鳴のように、"Keep!"、"Possession!"と叫んでいたが、狭いスペースでやってる分、切り替えの早いBarcaのプレス(あれはまさに「ボール狩り」だ)の餌食。普段はPossessionを取れるUnitedが、今日は全く取れない。つまりBarcaが普段と全く変わらないサッカーをやっていたのとは逆に、Unitedは普段とは全く違うサッカーをやっていた、あるいはやらされていたということだ。
Distanceも、Barcaの53.49kmに対して、Unitedは52.80km。
パス成功数もBarca365本、United139本。(Barcaのパス1本あたりの距離はBarcaはめちゃくちゃ短い筈)
要するに、statsは完全にBarcaが圧倒。
このstatsを見て、後半普通にやれば、絶対に勝てるとは思っていたが。
Messiはいつものように誰も止められない高速ドリブル連発。
2点目のシュートはいつものように、歩幅の狭いドリブルから、同じ歩幅のまま全くシュートのモーションを見せないままにボックス外から蹴って、「あっ」と思った瞬間にはネットが揺れていた。
シュートを決めたMessiはそのままBarca応援スタンド側に走って、「どうだ見たか」とばかりの気合の形相でコーナーフラッグを蹴飛ばす。ゴールの後で歓喜を表わすことはあっても、あんなに感情を爆発させたMessiを見たのは初めて。アドレナリン全開。これで2-1。
場内再生を見るとブラインド気味の所からちょっと巻いた軌道だったことでVan Der Sarも、全く予測不能のゴール。
残り20分で、ここのところ不調だったVillaも、Villaらしいコーナーに巻いて来るシュートを決めて3-1。
FW3人の揃い踏み。これで勝負あった。Barcaのボールを散々追いかけさせられていたUnitedの選手の心は、ここで折れたんだと思う。(この3点目、オレは思わず頭を抱え込んでしまった。なぜか？ こんなに美しいサッカーがあっていいのか、と頭を抱えるしかなかったんだ)
United守備陣は全く打つ手なし。いっそMadridみたいにファウルで壊しにかかるとか、去年のInter並みに引けば、90分持った可能性もあるが、それは彼らのプライドが許さなかったんだろう。
(ため息が出るような美しいサッカーだったと書いたが、それはUnitedが試合を壊さなかったからだ)
この一戦で、Barcaは世界一強いということを証明した訳だが、しかしそれにしても世界で2番目に強いチームとこれだけの差があるというのはどうなんだ。
メンバー構成を考えると、恐らくUnitedは来年の方が強くなるだろう。Chichalito、Valencia、Fabioあたりにはまだまだ大きな伸びしろがある。しかし、恐らくそれでも歯が立たない。それくらいとてつもなく大きな差がある。少なくとも3人のうち誰かが衰えるまでは、Barcaは無敵。
オーバーな話でもなんでもなく、Pep Guardiolaが率いるBarcelonaは、フットボール史における伝説のチームの1つとして永遠に語り継がれることになるのかもしれない。
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/eusoccer/1011/eucup/text/201105290002-spnavi_1.html
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