難民バス

gowest_lookeast2005-08-12

どうにかイランに入って、バムまでたどり着いた。まさに「たどり着いた」という感じ。


なんだか、キツい移動の話ばかりでおもしろくないんだけど、とにかく、昨夜のバスはヒドかった。これまでの海外旅行の中で3本の指に入るくらいキツかった。
(もっとも、ここの部分の移動が今回の旅の難所の一つってのは覚悟してたんだけど)


イラン国境の街、タフタンに向かうバスがクエッタを出たのは18時すぎ。
チケットを買う時に、「タフタンまで何時間だ?」と尋ねたら「12時間」と言われたので、奇跡が起きたら12時間。15時間なら御の字で、18時間かかっても不思議はないと覚悟した。
バスを見たときは、まあ予想の範囲内のボロいバスで、エアコンの効きも「パキスタンにしては」まあまあだったのだけど、ナニがアレって。


普通に2列シートで通路を挟んでるバスなんだけど、その2人ぶん(つまり2人ぶんのチケット)に夫婦と子供4人の一家6人で乗ってくるようなパキスタン人家族が数組いて、ただでさえ狭い、埃っぽい車内は、出発前から難民バス状態。


当然のように、通路には屋根に積みきれない荷物を置いて、ガキどもはそこの上にしゃがんでたんだけど、俺の横の通路(俺は通路側の席。窓側はちょっと小柄なパキスタン人で、これはラッキー)に座ってたガキが、さかんにツバを吐く。
まあ、パキスタン人は基本的に所かまわずツバ吐くんで、それはそれとして、どうも嫌な予感がしたんだが、見事に的中して出発して2時間くらいでゲロしやがった。
幸い、被弾はしなかったものの、けっこうブルー。


で、クエッタからタフタンまではざっくり600kmなのだけど、出発して3時間経過で、日本の高速なんかにもあるように「あと何キロ」という看板が見えてきたんで、とっさに120kmくらいは進んでるかなあと思ったら、無情にも表示は「あと520km」。


3時間で80kmかよ! 時速27kmって、オイ! ほとんど24時間ペースじゃねえか!


とか内心思いつつ、ここで叫んでも仕方がないので、耐えた。
(まあ、確かに上り道とかあったしな。とか激しく思い込むことにした)


で、夜中の12時くらいにちょっと休憩があったんだけど、ヘッドライトだの車内灯だのを点けっぱなしにしてたら、光を求めて羽虫が中に入る入る。
再出発の時は、車内に羽虫がブンブン飛んでて、さらにブルー度が加速したんだが、それに追い討ちをかけるように、脳なしパキスタン人どもが、手持ちのスカーフとかでこの羽虫の群れをはたきまくって、車内はさらに埃が舞い上がる。
オマエらなあ、そんなもん振り回しても一匹も死なんし、そもそも車内でライトを点けてる限り、虫は外には出て行かねえんだよ!!!


とか内心思いつつ、ここで叫んでも仕方がないので、耐えた。
(まあ、俺の所のライトは壊れてて点いてないしな。とか激しく思い込むことにした)


で、当然のように深夜に入っても、車内にはパキスタンミュージックがそこそこの音量で流れ、それでもパキスタン人は平気で寝てるように見えたんで、ああいう過酷な環境で眠れるってのは、アレはアレでスゴい。バスのボロさと道の悪さで揺れもひどいし。俺は何度かウトウトしただけで、ほとんど一睡もできなかったけど。


バスは、その後、勢いを盛り返し、というか道がかなり改善された点が大きかったのだが、なんと、朝の9時、所要15時間でタフタンに着いた。
残りの距離の看板が出るたびに、何度アタマの中で叫んだことか!!!


そんで。


車内には他にチェコ人3人組のパッカーがいて、彼らと一緒に「ザヘダーンまで行こうか」(イラン側の国境の街)ということになり、一緒に国境を越えた。パキスタンの出国のイミグレで、「パキスタンはどこから来たんだ? ラホールか? インドから来たのか?」としつこくきかれて、俺はラホールも行ったけどパキ入国は中国からフンザ、3人組はイランからパキスタンに入ってイランに戻る、と答えると再度「インドには行ってないんだな???」というんで、4人で「行ってない。行ってない。」と答える。
パキとインドの仲が悪いのは知ってるんだが、もしインドからだったらナニが起きてたのか、それはそれでヒジョーに気になる。


ともあれ無事にイラン入国して、そこから4人でタクシーをチャーターしてザヘダーンに着いた。
彼らが「これからどうすんの?」というから、まだ昼前だったんで、「俺、できれば今日中にバムまで行きたいんだよね。ザヘダーン、何もなさそうだし」というと、彼らもゴニョゴニョ話して「俺らもそうするわ」というんで、さらに一緒にバムまで行くことに。


ザヘダーンのバスターミナルでバスチケット買って、これから乗るバスを見て、4人で激しくカンドーした。
エアコンはガンガンに効いてるし、満員にならなくても時間になれば出発するし、まさに日本で走ってるようなバス。
これがバスだよなあ。道も良くなったし、ぜんぜん揺れない! とかいいながら5時間かかって17時にやっとバムの街に到着。


やっとベッドで眠れるー!


と思ったところ、彼らは恐るべき事をいい始めた。
「俺ら、今夜のバスでヤズドまで行きたいんだよね。これからバムの城を見てから、夜のバスに乗りたいんで調べるわ」
で、調べたところ、ヤズド行は夜中の1時とのこと。


そこでまたしばらくゴニョゴニョと話して、「街に行こう」というんで、流石にこのコンデョションで夜中の1時のバスには乗らねえよなあと思って、泊まるゲストハウスの前まで行ったんだが、彼らはチェックインせずに、「これから城を見て、1時のバスに乗る」と言うんで、倒れそうになった。


そもそも1時のバスなんて、どうせ始発じゃなくて、きっとザヘダーンを20時くらいに出たバスが通り過ぎるだけで、そもそも乗れるかも、時間通りくるかもわからねえんだぞ。
真っ暗闇の中でひたすら待って、手を振って止まってくれるかどうかもわからねんだぞ。


とも思ったんだが、彼らは去っていった。


その後、このゲストハウスに、別のバスでクエッタから国境を越えてきた日本人がやってきて、どうやら彼は俺らのバスより1時間先に出たんだけど、夜中に事故でトラックとぶつかって、座席横の窓ガラスが粉々に砕け散って、そこから先は窓全開状態で走ってきたとのことで、それはそれでスゴイ体験やね、という話をして、俺は俺で、こういうチェコ人がいて、これから夜中の1時のバスやぞ、ヤズドまでは8時間はかかるぞ、という話をしたら、彼も「ありえねー」と言っておった。