England vs Ghana @ Wembley Stadium, London

gowest_lookeast2011-03-29

今日、気が付いた。Tubeのプラットホームに書いてあった"MIND THE GAP"が今や、絶滅している。(以前コースケに、「ホームに書いてる"MIND THE GAP"って、アメリカ人としては変な英語なんだろ?」と聞いたら、「チョー変です。そんなの言わないですよ」という回答だった)
いくつかの駅のホームを見てみたが、どこにもないので、恐らく一掃されたんだ。ううむ。なんでだろ??


キックオフは20:00。
ゲートオープンは18:30というニュースをどこかで拾った記憶がある。
早めに軽くメシでも食うか、ということで、Selfridges裏のWagamamaに行ってみる。ウソかホントか、Johnney Deppがロンドンロケの時にあまりのメシのマズさに業を煮やして、ここからロケ弁を取ったというニュースをどこかで拾ったことがある。
なんだかまるで学食みたいに、大ホールにテーブルが無数に並んでいるような店だった。チキンカツカレー(なんでブタじゃないんだ)を頼んだら、かなりマトモなものが出てきた。驚いたことに福神漬けまでついていた。
だけど、後ろの席の白人はやはりミソ汁をスプーンですくって飲んでいた。


Bakerloo LineでWembley Centralへ。
駅から人の流れに乗ってスタジアムに向かう途中で、あの音が。ええと。あの音は。ブブゼラ??
振り返ると、スタジアム方向に向かう車で、黒人がハコ乗りしながらブブゼラを突き出して吹いていた。あの、凄まじく楽しかった南アフリカのことを思い出した。
考えてみると、これが予兆だったのかもしれない。今日は素晴らしい体験だった。


ブブゼラに気を良くしながら歩き進むと、スタジアムが見えてくる。
おお、あの、有名なアーチ。Wembleyだあ。


ということで、伝説のスタジアム探訪ツアー第926弾。



Wembleyです! Wembleyです!!
Wembleyでございますー!!!

2011年5月のWembleyでのFinalには絶対に行く! 何が何でも行く!
と思い定めたのが2〜3年前。(実際、チケットの抽選結果が出るのは来月なんだが)
元々、今日の試合は予定外で、今日のEurostarでパリに入るつもりでチケットも買っていたんだけども、Aマッチデー情報をつらつらと調べると、今夜はパリでもFrance vs Croatia @ Saint-Denisという試合があるものの、Englandもホームゲームをやってしまうと。Englandの日程的にはEuro予選後(3/26にWales戦があった)なので今日は消化試合・花試合ではあるが、Saint-Denisでは98年に1試合だけ(Italy vs Austria)観てるし、5月のチケットが取れる保証もないし、と思いつつMに意見を聞いたが、曰く、

「そらWembleyやろ。当然やん。Saint-Denisは行ったことあるんやろ? そらWembleyやろー。5月の下見しといてよ」
「俺のパリ滞在が減るんやけど。パリやぞ。パリ。華の都やぞ」
「そんなん、どうでもええやん。だってWembleyだぜ?! そら普通Wembleyやろー」
「Eurostarのチケット、安い前売り料金やから払い戻し効かんのよ」
「そんなん、どうでもええやん。だってWembleyだぜ?! そら普通Wemblyやろー」

と、俺の心を押してくれたし、ということでEurostarのチケット42.5ユーロを捨てて、1日後(つまり明日の朝)チケットを取り直してまでWembleyに行くことになってしまったのが2月後半だったのだ。



思ったよりガーナ人が多い。新聞によると21,000人と書いていたが、確かにそれくらいはいたような気がする。これは想像だけれども、恐らくGhanaからは結構移民がいるんだと思う。彼らは本当に楽しそうだった。イギリス中の同郷の皆が大集合みたいな。
Rooneyも、Lampardも、Terryもいないけれど、だけど彼らにとっては今日は祖国の英雄達がEnglandとWembleyで試合をするというハレの日なんだ。きっと。
「いやあ。お互いココでの生活もタイヘンだよな。なんだかんだで下働きばっかでさ。けど今日は楽しもうぜ」みたいな。
日本代表は1度だけWembleyで試合をしたことがある(あの、井原のミドル)が、あの時に日本人が20,000人大挙して押しかけても、ああいう雰囲気にはならなかったと思う。


Englandは、Euro予選の試合をやった直後で、大物はCLにそなえてクラブに戻ったということで主力不在。
その中での注目はやっぱりCarrol。ここ何年もEnglandは、4番と8番の共存という大きな課題を抱えていたが、Rooneyの相棒探し=生粋のCF不在という問題もあって、果たしてCarrolはそれを解決できるのか?という意味でEngland期待の星。
Ghanaはフルメンバーで、大看板のGyanとMuntariはスタメン。南アで俺の目を引いたAsamoahもスタメン。ただ、こちらもANC予選をCongoだかでやって中2日くらいでLondonということはキツいコンディションなのは間違いない。
どう説明しても、試合の位置づけは(とりわけEnglandにとっては)、相当低い。フルで真剣マッチやれば、相当いい試合というか、Ghana勝っても不思議じゃないくらいの力関係だとは思うけど。


試合前、スタジアム内にはBGMでNew Orderの"World in Motion"が流れる。
おお、そう来ましたか。かっこいいじゃないですか。でも、言われてみりゃそりゃそうですよね。
けど、気が付いたんだけど、W杯の時にはあれだけスタジアム全体に貼られる、もうこれ以上貼る場所を探すのは難しいです、っていうくらい貼られるセント・ジョージ旗が異常に少なかった。なんでだろ。
(ちなみに本日の入場者数は80,102人)


ということで試合自体は。
Carrolはあんまし見せ場なかったと思う。得点シーン以外は。
タテに短いロビングが出て、それを11番Downingが頭で落としたところ、前を向いて拾ったCarrolがすかさず右足でスミに入れた。
綺麗なゴールと言えば、綺麗なゴールではあったが。


Ghanaは出足落ち着きなかったが、徐々にボールを取れるようになってきて、決定的なチャンスも何度か。
しかしワクに入らなかったり、GKのナイスセーブもあったりで、ゴールにならん。(今日は双方GKの見せ場が多かった。ナイスセーブ連発)


そんな中、Ghanaサポはボールを奪っただけで大騒ぎ、奪われただけで大騒ぎ。見てるだけでこっちまで楽しくなってくるリアクション。
Englandサポは、「こいつら、うざいな」と思ったかもしれないけど。第三者である俺としてはアリ。大アリ。


そんなGhanaサポを見ながらも、
「あー、これ1点取らせたいなあ。ええやん。Englandにとってはどうでもいい試合なんやし。コイツらにとっては一世一代のWembleyなんやぞ」
とか思っていたのだけど。思っていたのだけど。思っていたのだけど。だけど。


1-0のままロスタイム突入。3分あった。


ここでカタルシスがやってきた。


ハーフラインをちょっと越えた右の辺りで前を向いてボールを持ったGyan。ドリブル開始。中央に向かう。
右から追い越していくGhanaのシャツが1人。
Gyanは突っ込む。
「あー、これ、右に出せよ。フリーじゃん。中はキツいよ」と思ったのだけど。
それでも王様Gyanは突っ込む。
「えー、だからキツいって。そこは」


王様、シュート。


その直後、狂喜乱舞拍手喝采熱烈歓迎のGhana人が20,000人、そこに、いた。
本当に狂ったようにGhanaの国旗がうち振られる。
England人は「あー、最後の最後でやられちゃったなー」という感じで苦笑い。そして多少の落胆。


1-1のドローで終了。けど、これはGhanaにとっては勝ちに等しい終わり方だ。(なんでもEnglandは未だにアフリカの国に負けたことがないらしい)
試合後、Ghanaの選手はGhanaサポの応援席前で国旗を振りながらアピール。
今日のこの日の試合をTVでも観ていた全てのGhana人は、本当に幸せな気分で眠りについたに違いない。
いや、眠れなかった奴だっていたに違いない。


判りきっていることではあるけれど、
「ああ、サッカーにはこんなにも色んな人々を幸せにする力があるんだあ」
と改めて感動した。


そして、Ghanaサポの喜びを見ていると、こっちまで幸せな気分になってしまった。
Wembleyというマジカルな空間のせいだったのかしらん。自分ちの関係ない全くのヨソんちの試合で、こんな気持ちになったのは、初めてかも。



P.S.
Wembley Centralの駅のホームには"MIND THE GAP"があった。ここはZone4の駅だけど、完全に一掃された訳でもないらしい。